『アマビエ』の原型は『アマビコ』?コロナで人気の妖怪のルーツは?

『アマビエ』の原型は『アマビコ』?コロナで人気の妖怪のルーツは?

2020年、新型コロナウイルス流行に伴い、にわかに脚光を浴びることになった『アマビエ』。

 

「疫病退散」の願いをこめて、プロアマ問わず多くの人が漫画やイラストに描いたり、お菓子やお酒・ラーメンなどなど様々な商品のラベルになったりと、これまで世の中を賑わせてきた「ゆるキャラ」もビックリの人気を博しています。

 

ところでこのアマビエという妖怪、元々の原型となる姿・あるいはルーツとなった生き物とかってあるのでしょうか?

ここでは、そもそもアマビエって何?って所から、今のところ定説とされているアマビエの原型・ルーツに迫ってみたいと思います。

 

そもそもアマビエとは?

唯一、現存する瓦版

『アマビエ』とは、江戸時代後期の瓦版(様々なニュースを版画で刷ったもの)に登場した妖怪。

 

アマビエに関して、唯一残る記録の瓦版がこれです。

 

アマビエ瓦版
『アマビエ』が記された瓦版(京都大学附属図書館所蔵)

肥後国海中え毎夜光物出ル所之役人行
見るニづの如く者現ス私ハ海中ニ住アマビヱト申
者也当年より六ヶ年之間諸国豊作也併
病流行早々私シ写シ人々二見せ候得と
申て海中へ入けり右ハ写シ役人より江戸え
申来ル写也

     弘化三年四月中旬

 

日付は弘化三年。「1846年4月中旬」に発行されたもののようですね。

 

要約すると、肥後の国(今の熊本県)で夜ごと海に光るものがあり、土地の役人が見に行ってみると、アマビエと名乗るものが出現。

そして、「今年から6年の間は諸国で豊作がつづく。しかし同時に疫病が流行するから、私の姿を描き、写した絵を人々に早々に見せよ。」と予言めいた言葉を残し、海の中へ消えたということです。

 

左の図は、アマビエを目撃した役人が描いた図とされています。

これを見ると、

  • 長髪で鳥のようなくちばし
  • ひれのような耳
  • うろこのある胴体
  • 毛むくじゃらの3本足

といった特徴があり、現在世の中で出回っているアマビエのイラストは、こういった特徴を踏まえて描かれていますね。

 

いつから人気になったの?

日本で新型コロナウイルスが流行し始めた2月末に、妖怪掛け軸の専門店がアマビエのイラストを描いて、SNSに投稿したのがきっかけとされています。

 

その後、漫画家やイラストレーターなども、独自に描いた個性的なアマビエ像を投稿。

また、アマビエをかたどったお菓子やパンが作られたり、お酒・飲料水・ラーメンなどなど、様々な商品のラベルやデザインにも使われるように。

 

さらに4月には厚生労働省が、新型コロナのWeb向け対策のアイコンとして、アマビエのイラストを採用。

国からもお墨付きをもらい、アマビエはこの新型コロナ時代の「疫病退散」のシンボルとして、すっかり人気者となりました。

 

アマビエの原型とは?

アマビエの記録が記された弘化三年より3年ほど前、1843年ごろに、『アマビコ』と呼ばれる妖怪が描かれ、流行したようです。

 

アマビコ
『越前国主記』福井県立図書館所蔵
アマビコ
明治時代以後に描かれたとされる肉筆画(Wikipediaより)

 

アマビコ(あま彦・天彦・雨彦・海彦・尼彦)は、明治時代中期にかけて絵や文章に記されるなどして、当時の世の中に広まったようです。

 

記された資料や新聞記事によってその特徴は異なっていますが、大まかな共通点としては、

  • 3本足で毛むくじゃら、猿のような容貌
  • 肥後国の海に、光を発して出現
  • 「六年間の豊作が続く」、「疾病などで多くの人々が死ぬ」、「自分の姿を描き記せば、難を逃れられる」などと予言する

といった点があり、アマビエと共通する部分も多くあります。

 

現在は、この「アマビコ」を「アマビエ」と間違えて記述され、アマビエという妖怪として広まった、というのが有力な説となっています。

 

今のようにテレビやラジオ・ネットはもちろんなく、情報通信手段が限られ、伝達のスピードや正確性も乏しかった時代。

科学が発達する前、疾病や天災など原因が分からない災厄に対して、人々は人知を超えたものにすがるしか、困難を乗り越える術がなかったとされますね。

 

いにしえの人の「疾病退散」の願いが込められた妖怪が、まさか150年以上を経た現代で、国中の人々に広まるとは・・。当時の人々も思ってなかったのではないでしょうか。

 

まとめ

以上、100年に一度とも言われるパンデミックに世界中が覆われた中で、にわかに人気者となった江戸時代の妖怪『アマビエ』と、そのルーツについて見てきました。

 

2020年7月現在、一時は収まりつつあった新規感染者もまた大きく増え、新型コロナの収束はまだまだ見えない状況ですね。

 

科学技術や医療が発達した21世紀の現代においても、封じこめるのは困難なウイルス及びパンデミック。

アマビエを愛でつつ、苦しい時代を生きた先人たちに思いを馳せながら、これまでの私たちの暮らし方を見直してみるのも良いかも知れませんね。

 

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